旬の人
地元の人に愛される味を
和田 洋子さん(天塩町)
留萌管内北部の天塩町は酪農のマチ。
牧歌的景色が続くこのマチにキムチ工房がある。
目立つ看板を掲げず、素朴だが清潔な店内に、「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」和田洋子さんの明るい声が響く。

洋子さんは天塩町の酪農家に生まれ、高校を卒業するまで酪農家の両親を助けとなり、家事全般をこなて兄弟姉妹の面倒をみてきた。
卒業後は4Hクラブ(農業青年グループ)に入会し、酪農家の昇さんと知り合い結婚。「牛のことは全て主人が教えてくれました」と洋子さんは語る。

和田牧場を夫婦二人で経営し、これまで農業実習生を受け入れたり、「ふれあい牧場」に登録し酪農体験を通じ、農業の魅力を伝えてきた。

平成8年から夫婦二人で町民農園に参加し、野菜を育てている。町民農園に参加した頃、友人から珍しい大根の種をもらい育てた。
収穫後、さまざまな調理を試みたものの、普通の大根とは味、食感に大きな違いがあった。そこで、洋子さんはキムチに挑戦し、初めてその大根の旨みをだすことに成功した。漬けあがりを仲間に食べてもらうと評判が良く、キムチ作りの奥深さに洋子さんはのめり込んでいった。
平成10年には本場韓国で伝統のキムチ作りの伝統を教わった。以来4年にわたり、天塩の地に合った味を研究し、ようやく想い描く「てしおのキムチ」が完成した。

平成14年、念願のキムチ工房を開店。白菜・大根・キュウリ・長イモ・セロリ・タコ計6種類のキムチを作る。一番人気は白菜。地元の水タコを使ったキムチも人気。自慢の薬味はおよそ一週間の熟成を要する。薬味と具のバランス、つける時間も材料によって変えている。

洋子さんの1日は忙しい。朝と夜には毎日、昇さんと牛の搾乳をし、家事をこなしながら工房の主人としての仕事もこなす。そんな忙しい毎日でも笑顔を絶やさず、張り合いを持ち続けられるのは、キムチを心待ちしているお客の存在が大きい。

天塩ならではの素材をまろやかに漬け込み、素材の美味しさを食卓に届けるため、今日も洋子さんは笑顔で工房に立つ。

てしおキムチ工房とキムチの小鉢
(左)木製の素朴な看板が工房の目印。
(右)キムチを小鉢に盛り合わせる。酒のつまみに、そしてご飯のお伴に。
和田洋子さん
和田 洋子さん
昭和22年生まれ
天塩町在住

てしおキムチ工房代表
和田牧場経営

調理風景
こだわりの薬味を白菜に丁寧に塗り込む
調理風景
しっかりと包み込んだ白菜、このあと味がなじむまで冷蔵庫で寝かせる