旧花田家番屋でニシンの残像を知る

小平町

〜鰊漁最盛期を物語る歴史遺産を見学する〜
vol.19
学生時代には北方史を研究していた長澤氏に番屋について聴く
奥の間には金庫も備えられていた
海を見渡す南北に長い外観
今回は「歴史・産業遺産」の体験プログラムのひとつ、「旧花田家番屋でニシンの残像を知る」体験のため旧花田家番屋を訪ねた。11月上旬、小雨まじりの午後鬼鹿に到着すると海には波が立っていた。「旧花田家番屋」は、国道をはさんで少し小高くなった所にある。海岸を目の前にした場所は、漁の様子がよく見えるところだ。

一見和風にも見える番屋だが、屋根飾りの意匠や庇の形状など洋風建築の部分もあり、当時の建築様式の流行が取り入れられた造りになっているという。地元大椴(おおとど)地区の山から切り出された木材で建てられた。
外観は南北に長い造りで、中に入ると広い板の間とその上の高い吹き抜けが目に入る。
板の間は漁夫らの生活空間で、太い角柱や梁に囲まれ囲炉裏が3つ切られている。

最盛期の花田家には雇人が500人以上、米蔵や網蔵など関連建物は100棟近く所有し、鰊の水揚げには蒸気機関を動力にウインチやトロッコも使用し、最新技術を取り入れた大鰊漁家だったという。
漁場を何ヶ所も持ち、私設電話でやり取りした姿には現代の経営者にも通じるものがあるようだ。
内部には、鰊を入れて運んだ「もっこ」と呼ばれる背負子(しょいこ)などの漁具の展示、鰊漁最盛期の写真資料や動画を見られるように掲示されている。

多くの尽力により重要文化財に指定された昭和46年当時、長年の風雪にさらされた屋根が破れるなど激しく傷んでいたという。小平町では指定と共に買収、費用をかけて解体修復し現在の姿にした。
歴史を伝えようとした地元の人々の努力と心意気が感じられる。
旧花田家番屋は通年公開しており、冬期にも見学できる数少ない施設だ。
例年5月最後の日曜日には「鰊番屋まつり」が開催されて多くの観光客でにぎわう。また毎年1月26日は文化財防火デーにちなんだ防火訓練が行われ、放水訓練が実施されている。
隣接の道の駅「おびら鰊番屋」では鰊の三平汁を味わうことができる。往時に想いを巡らせながら食したい。

学校など教育目的の団体に限りガイドによる解説も受けられるが、事前申込が必要だ。
隣接の道の駅「おびら鰊番屋」では地元の特産品も多数販売
三平汁(小平町 道の駅おびら鰊番屋)
 
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