雪溶け後すぐに確認するのは猛禽類が渡りでまだ戻って来ていないかどうかだ。帰ってきていないことを確認してから巣がよく観察できる良い木を選び、撮影用の板台を組む。撮影ができるまでの数ヶ月は他の撮影地を回り、野鳥や野生動物の撮影に粘る。
猛禽類の撮影は撮影ポイントの確保が不可欠。
タルキ、ドウブチ、ヌキを軽トラに積み林道を走り、道路わきから担いで撮影ポイントまで運び、適当な木を選び撮影距離が遠いのでハシゴを10mほどの高さに組み上げその上に板台を作り撮影します。元来高所は平気なものの木の上は結構揺れ、船酔い状態で撮影出来なかった日もある。
長い撮影活動の中には面白い場面に出くわすこともある。アオバトを撮影しているとき、頭上から羽が舞い降りてきたので、空にレンズを向けるとハヤブサがアオバトを捕まえる瞬間だった。とっさに連写し貴重な一枚を撮ったこともある。
冬、山奥でシマフクロウをじっと待っているときのこと。
目の前をネズミが走ったかと思った瞬間、カケスが何処からともなく現れ、見事、捕獲する場面が撮れた。
自然写真家、動物写真家になる条件のひとつは忍耐強さである。
教育委員会からの依頼で地元の小中学生に動物の生態や海ワシについて教えたことがある。泊さんの話を聴く子供たちの目は輝き、真剣に聴いていた。実際に野生の動物に触れ合うこと,自然を身体で感じる体験が必要と感じ、将来は「モモンガを見る会」を立ち上たいと考えている。
今、森の環境は変わりつつある。
アライグマの生息範囲が全道に広がったことを危惧している。外来種のアライグマは冬眠せず繁殖率も高い。遠別での捕獲数は平成16年1頭、平成20年71頭。6~7匹の群れを見たという情報もある。雑食で農作物を荒らすのもしばしば。生態系がどう変わるのかも見届けたい。
「海ワシを撮る魅力は?」と尋ねられると、いつも言葉が詰まってしまう。
子どものようだが「好きだから」としか答えられない。
野鳥や動物たちに認知されるまで一体どれだけの時間を費やして来たことか。海ワシたちが待っていてくれるような気がして海岸を歩く。
海からの贈り物と呼ぶ『海岸に打ち上げられたアザラシや海洋動物』を探し、波にさらわれないように浜まで引き上げる。海ワシや鳥達にとっては、海からの贈り物は厳しい冬を乗り切るごちそうとなる。群がるワシ達を観察し、まだ知られてない行動を調べていると、いつしか研究者にでもなったような感覚になる。長い年月をかけて撮影を続けてきたため、今、糞をしたから間もなく飛び立つとか、海ワシの健康状態まで分かるようになった。羽が傷みツヤが無く、渡りが始まると途中で海に落ちて自然淘汰されるだろうなと思うワシもいれば、鉛の影響で緑色の糞をする固体もおり、その命が長く持たないと感じることもある。何とか救いたいと思っても、悲しいかな手の及ぶ所ではない。
だが、写真家としてできること。
それは、大空を舞う姿、海ワシの素晴らしい姿を撮り続けて命の警鐘を鳴らし続けたいと願っている。
会 期 | 平成24年3月3日(土)〜3月8日(木) |
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時 間 | 10:00〜19:00(最終日18:00終了) |
会 場 | 紀伊国屋書店札幌店本店2階ギャラリー
札幌市中央区北5条西5丁目7番地sapporo55ビルTEL011−231−2131 |