旬の人
北の大地に響くささらの音
山本 金次さん(羽幌町)
『こきりこの竹は七寸五分じゃ 長いは袖のカナカイじゃ
窓のサンサもデデレコデン はれのサンサもデデレコデン』
この歌いだしで始まる富山県の古代民謡、こきりこ唄
歌い継ぎ踊り継いでゆく、ささらの音とともに
海を渡り羽幌で生き抜いた先人達への想い馳せつつ、今も伝える

富山県 旧平 ( たいら ) 村(現・ 南栃 ( なんと ) 市)は近隣の村とともに五箇山と呼ばれている。合掌造りの集落が今も残り、隣接する岐阜県白川村とともに世界遺産にも指定された。五穀豊穣を願う古代民謡『こきりこ唄』が、口頭伝承されてきた土地である。

明治時代には旧平村より村人が集団で北海道へやってきた。月形町を経て羽幌町へ入植した人々は、平地区を形成することとなった。
山本さんの曾祖父も旧平村出身だった。この地で米を造り、この地で一生を終えた。そして子孫であるやまもとさんは、先祖が苦労して開拓した田畑を受け継いだ。

昭和53年、山本さん38歳の時に『こきりこ唄』に出会った。平地区の住民が中心となり、祖先の故郷に伝わる伝統文化を羽幌町で広めようと『羽幌町こきりこ唄愛好会』を結成に加わったのだ。
結成当初、衣装を揃えるために平地区の休耕田を借り、秋蒔き小麦を植え、収穫して資金にした。先祖が生まれ育った旧平村を訪問し、村の風土を身体で感じとったこともある。「当時は若かったから苦労も楽しかった」と山本さんは語る。

昭和60年、『越中五箇山 筑子 ( こきりこ ) 保存会』から全国唯一、正式に分家として認められたのを機に、『羽幌町こきりこ保存会』に改名。
去年11月には旧平村と羽幌町の友好町村締結30周年を記念し、地元の中・高生らとともに旧平村を訪問した。
今年は五箇山の保存会会員が来町し、小学生と交流を果たしている。
山本さんは、こきりこを踊った子ども達が、将来ほかのマチで暮らす時、『心の故郷』として誇りに思ってほしいと願っている。

新天地に根づいた 筑子 ( こきりこ )

富山と羽幌の平を繋ぎ、このマチで暮らす人々を繋いでいる。

山本金次さん
山本 金次さん
昭和15年生まれ
羽幌町在住

羽幌町こきりこ保存会 会長

こきりこ
【筑子】
こきりこ。小切り子とも書く。大化の改新(645年)頃から豊作祈願の田楽として富山県、越中五箇山に伝承された古代民謡。楽器は竹で作られた「筑子」、短冊型の薄い板を合わせた「板ざさら」、鍬を用いた「鍬金」など。踊りは神楽舞、しで竹踊り、手踊り、ささら踊りなどで構成される。
ささら
板ささら