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豊かな海を夢見て・・・・・・相馬 龍平さん(増毛町)


 留萌管内増毛町舎熊の海で、胴付合羽で、腰まで海に浸りながら、水中カメラで藻場(もば)の状況を確かめる人がいる。
 「いい昆布だべ」。
 人々の想いが込められた豊かな昆布を手にして、笑顔を向ける。

 明治初期、相馬龍平(たっぺい)さんの高祖父母は青森県川内村から増毛町阿分の鰊場にやってきた。当時、同郷の人々は相馬家を頼りにこの地にやってきたという。
 戦後には祖父が、町の漁業者らと増毛海洋漁業株式会社を立ち上げた。30歳の時、この会社で働くことを決めた相馬さんは、妻子を連れて東京から戻って来た。

 平成5年には、水産物を加工する際の残渣(ざんさ)を微生物で分解する研究から、仲間とともに高品質の肥料である醗酵魚粉(魚カス)を開発したが、その活用の目途が立たず、模索の日々を過ごしていた。
 平成10年、増毛漁協と北海道大学の共同研究による「いそ焼け」対策に参加する機会を得た。そのなかで、藻場(海藻の群落地帯)の再生に相馬さんらが開発した肥料を活用できるという専門家の見解は、相馬さんと仲間達に勇気を与える。
 「いそ焼け」とは沿岸の海藻が死滅した結果、ウニなどの水棲生物が減少する環境問題であり、漁業者にとっては死活問題である。
 その対策に、増毛町では醗酵魚粉と、製鋼スラグ(※)を混ぜた肥料を海底に沈め、栄養分を補給する方策を選択した。
 豊かな海の再生を目指すこの取り組みは、国内外から熱い注目を浴びている。
 「たいそうなことでなく、鰊とりの、なれの果て」とユーモアを交えながら、相馬さんが語る藻場再生への歩みだ。

 藻場は命を育む海の森。
 小魚や鰊が、海藻に卵を産み落とし命の棲み家とする。やがて成長し、大海を旅して故郷の藻場に戻り、新たな命を繋いでゆくのだ。
 「僕の体は鰊で出来てるからさ」。
 高祖父から数えて相馬家五代目として、今日も舎熊の海を見守っている。



※製鋼スラグ・・・鉄鋼製造工程で発生する副産物。
この取り組みは、MOBA.WS藻場再生プロジェクトのサイトで紹介されている。詳しくはこちらへ。


増毛町舎熊の
藻場。

引き潮になると、波打ち際に姿を現す昆布が、豊かな海へと夢を広げてくれる。

◆フリーペーパーるもいfan通信 vol.28

相馬 龍平(たっぺい)さん

昭和27年生まれ
増毛町在住
(株)北海道オーシャングリーン開発増毛事業所 所長




藻場の昆布の生育状況を確かめる相馬さん



水中用のカメラ機材を用意して海に入る。海中の様子をしっかり確認する
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